技術解説 PWM制御の実験
モータ制御
PWM制御の実験
今回は実際にDCモータを用いてPWM制御で駆動する実験例を紹介します。
8章 モータPWM制御の基本形
実験では、mabuchi製RS-380PH-4045を使用しました。自動車電装機器、電動ドリルやドライバ工具、ハンディクリーナ、ラジコンホビーなど幅広い用途に使用されている代表的なDCブラシ付きモータです。
RS-380PH-4045仕様諸元
8-1 ダイレクトPWM制御
ダイレクトPWMでより効率の良い駆動制御を行うために、以下シーケンスで制御を行います。
- ①Dutyオン区間で、電源からモータコイルに電流を流し電荷チャージする。
- ②Dutyオフ区間では、スイッチオフでは無くショートブレーキ通電モードにし
- オン区間でチャージした電流をできるだけ残す様にSlow decayモードでゆっくりと減衰させます。この方法は、回転するモータの発電特性を上手に活用し電気エネルギーをより効率良くモータトルクへと変換するやり方です。
※②でショートブレーキでは無く、整流素子を全オフにするとFast decayモードとなりオン区間でコイルにチャージした電流は、オフ区間に入った瞬間に電源へ回生されます。電気エネルギーを電源に戻すので消費効率は良いのですが、モータトルクは②に比べ低くなります。
この2種類のdecay整流モードを上手に使うと次の様な高品位な制御が行えます。
- ・連続で同じ回転方向にモータを回し続ける場合はslow decayで
- ・モータをある場所でより正確にピタリと停止させる位置制御を行う場合には、
- 停止する少し前からFast decayモードに遷移させておくとモータトルクが少し弱くなるのでより回転慣性力が弱くなり、より停止し易くなりますし、エネルギー効率も良くなります。
では、実際にPWM制御でモータを回してみます。高速なダイレクトPWM制御が可能な専用のモータドライバICを使用します。
TB6614FNG(東芝製)
SSOP16pinパッケージと非常に小型ですが、モータ電源範囲が、2.5V~15Vと広く電池用途~産業用途まで使えます。また、出力オン抵抗(Ron)が0.3Ω(typ.)と小さく内部損失が小さいので出力ドライブ電流も最大4.5Aまでの能力があります。高速なLDMOS素子を使用しており、PWM周波数=400kHzと非常に高速です。
- 更に保護機能として、
- ・出力貫通電流(天地落ショート)防止にdead time=80nsを設けてあります。
- ・電源喪失時の暴走防止に低電圧検出(LVD)
- ・内部過熱保護(TSD)
- ・過負荷時の過電流保護(ISD)も内蔵
- パワーデバイスとして非常に壊れにくい特長があります。
ダイレクトPWM制御実験回路
[ fPWM=100kHz、Duty=20%パルス列入力、slow decayモード ]
RF抵抗で検出されたモータ電流=VRF÷0.6Ω≒267mAと読み取れます。
[ fPWM=100kHz、Duty=60%パルス列入力、slow decayモード ]
RF抵抗で検出されたモータ電流=VRF÷0.6Ω≒767mAと読み取れます。
この波形を見ると、Dutyを増加すると想定通りにモータ電流(モータ駆動トルク)が増えていることが確認できます。
8-2 定電流PWM制御
ダイレクトPWM制御の応用として、定電流リミット制限による自励PWM制御による定電流PWMチョッピング制御方式があります。
この機能をもつ専用ICのTB6598FNG(東芝製)を使用して定電流PWM駆動実験を行います。
TB6598FNG
TB6598FNGブロック図
TB6598FNG動作チャート
- ①外部からVlimit電圧を入力設定します。
- ②RF抵抗×モータ電流で発生する電圧を内部コンパレータで比較し
- Vlimitに達すると、内部クロックを2bitカウントした時間分slow decay動作をします。
TB6598FNGによる定電流PWM制御波形例
VM=12V,Vcc=3.3V,Vlimit=0.15V(Duty=25%),RF=1Ω
VM=12V,Vcc=3.3V,Vlimit=0.4V(Duty=66%),RF=1Ω 定電流設定Vref値を0.15V⇒0.4Vに可変
オンDutyが増加し、モータ電流IRF(ch.2)の増加が分かります。