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技術解説 DCモータの定電圧制御、定電流制御

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モータ制御

定電圧制御、定電流制御

始動、停止、トルク、回転数などの代表的な駆動方式として定電圧制御回路と定電流制御回路を紹介します。

6章 DCモータ駆動制御

5章では、最も基本的なDCモータの回路例(DCモータと電源とスイッチ(SW)で構成した例)を紹介しました。しかし、実際の可動制御メカに組み合わせて装置を製作する場合には、モータの始動、停止、トルク、回転数などの状態制御を行うことが殆どで使用目的や挙動性などに応じて、より無駄の少ない適切な駆動制御を行います。本章では、制御回路で良く使用される代表的な駆動方式を解説します。

6-1 定電圧制御

基本駆動回路がベースで、最もシンプルな構成であり下図に示す様な電源電圧を制御する回路構成です。

定電圧制御

電源電圧を制御する事によってモータに印加される電圧が決まります。印加電圧に応じてモータ電流が変化し、発生するトルクが変わる特性を利用した定電圧制御駆動です。

6-1-1 実用定電圧回路例

簡易的な実験では、制御電源をDC安定化電源装置か電池を使用すれば十分に安定した電圧を供給印加することは容易です。

しかし、実際の組込み回路装置を製作する場合は、他機能の回路、部品も多く混載されサイズ、スペース、コストの制約もあり電源回路を余裕を持ったリッチな回路には作れないことは良くありますし、電池を電源とする携帯機器の場合は、電池サイズ(容量)の制約もあります。

かと言って、モータの動力特性は印加電圧に直に依存する大前提もあります。それらの点を配慮しモータ動力性能が補償できる電圧制御回路にする必要があります。具体例として電源の定電圧特性をカバーする補償回路を付加し多少、電源電圧が変動しても、一定のモータ印加電圧ができる様にオペアンプを使用した定電圧制御回路例を紹介します。

①オペアンプを使った定電圧制御回路

オペアンプの負帰還(voltage follower)による定電圧制御を利用した回路です。OpAmpの非反転入力端子(+)に入力される電圧VINと、反転入力端子(-)に接続された回路箇所の電圧VMが等しくなることを利用しています。

オペアンプを使った定電圧制御

VINは、電源VBに可変抵抗VRとR2の分圧です。モータに印加される電圧VMは、OpAmpの負帰還によりVIN=VMとなります。モータ電流IMは、OpAmpの電流出力能力では賄えない為、NPN Tr.で電流増幅してモータに供給します。

②専用モータドライバIC TA7291を使用した定電圧制御回路

実際の制御回路開発では、①のOpAmpを使用した定電圧制御回路を内蔵しているモータドライバICを使うのが、より便利で実際的です。良く知られた代表的なICでTA7291P(東芝製)というものがあります。

TA7291P(東芝製)

TA7291Pは、①のOpAmpを使用した定電圧制御回路を内蔵しています。下記にブロック図を示します。

ブロック図

Vrefに入力した電圧が、モータ端子VOUT1(or VOUT2)の電圧と同じになる制御をします。

TA7291Pを利用した定電圧制御
6-2 定電流制御

前述の定電圧制御を行うと、電源電圧の変動要因はキャンセルできますが、実際のモータ駆動の場合、更にモータトルクを乱す大きな要因として軸負荷変動要因があります。モータ軸への負荷量が常に一定であれば良いのですが、何らかの外部要因でモータ軸に掛かる負荷量が変わった場合、モータで生成される抵抗特性が変わってしまいます。

この場合、定電圧印加制御を行っていてもモータ自身の抵抗値が変わってしまうため流れるモータ電流が変わってしまい軸負荷変動に依存して発生トルクが変わり結果的にモータ挙動も変わってしまうことになります。この要因をキャンセルする工夫として、定電流制御というものがあります。

6-2-2 定電流制御の回路例

定電圧制御でも使用したOpAmpを活用した定電流回路を下記に示します。

OpAmpを活用した定電流回路

定電流制御は、モータ印加電圧が変動しても常に同じモータ電流で制御できますし、軸負荷変動でモータ抵抗が変化しても、更に安定して同じモータ電流で制御できます。

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