技術解説 バイポーラトランジスタのバイアス(電流帰還バイアス)
アナログ回路設計
電流帰還バイアス回路
前回は基本的な固定バイアス回路を説明しました。しかしながら固定バイアス回路では要求仕様を満たせないケースもあります。今回は固定バイアス回路および電流帰還バイアス回路の短所と長所および設計の勘所を紹介します。
固定バイアス
特長
- 〇長所:低電圧動作が可能
- ×短所:回路ゲインがhfeのバラツキに依存する
回路設計の勘所
増幅器(アンプ)の回路で最も効率の良い出力レンジを得るには、バイアス電位を電源電圧(VCC)の1/2にすることです。コレクタ電流(IC)と負荷抵抗(RL)で発生する電圧降下が1/2VCCになるようにRLで制限される最大コレクタ電流ICを求めます。
固定バイアスアンプの負荷抵抗RLとコレクタ電流ICの関係式を次式に示します。
IC = (VCC/2) ÷ RL
電流帰還バイアス
電流帰還バイアス方式は、最も良く使われるバイアス回路です。
電流帰還バイアスの動作
トランジスタのエミッタ抵抗(RE)で電流帰還がかかり、電源や温度変動変動に対して安定なコレクタ電流にしてくれる動きをします。
ベース、グランド間の抵抗は、ブリーダ抵抗と呼び、入力無信号時(無限大入力インピーダンス)であってもアンプの動作を安定化しSN比を向上させます。
- (1)バイアス電圧は、ベース電流(IB)の変化にかかわらず一定の電圧になる。
- (2)何らかの外乱要因でコレクタ電流ICが増加しても、
- エミッタ電流(IE)もその分増加し、エミッタ抵抗(RE)で発生する電圧(VRE)も上昇するのでトランジスタのVBEが減少しベース電流(IB)が減少し結果的にICの増加を抑制する帰還制御ループが形成されます。
特長
- 〇長所:素子のhfeバラツキに依存しない
- ×短所:低電圧で動作しない
このバイアスを使った増幅回路の最大の売りは、外乱要因(温度、電源変動)に対して安定したアンプ動作が得られることです。また、トランジスタ素子のhfeバラツキにも強い特長があります。
回路設計の勘所
エミッタ抵抗(RE)と並列にバイパスコンデンサ(CE)を設けることで交流電流をGNDにバイパスさせます。入力信号の交流成分がエミッタ抵抗に流れてエミッタ電圧に重畳することでアンプとしてのSN比の低下を抑制する事ができ、リップルレジェクタとしての役目を果たします。